【抽出の科学】コーヒーの挽き目基準と味の相関性|ミクロン単位で決める粒度調整の正解

「奮発して買ったスペシャルティコーヒーなのに、家で淹れるとなぜか酸っぱいだけで終わってしまう」

「レシピ通りに淹れたはずなのに、苦味が刺さる」

もしあなたが今、そんなモヤモヤを抱えているなら、原因の8割は「挽き目(グラインドサイズ)」の不適合にあります。

多くのコーヒー本やサイトには「中細挽き」と書かれています。しかし、この言葉ほど曖昧で、私たち抽出オタクを悩ませるものはありません。あなたの「中細挽き」と、バリスタの「中細挽き」は、ミクロン単位で見れば全くの別物だからです。

家淹れ珈琲研究所では、感覚に頼った曖昧な表現を廃止します。

本記事では、SCA(スペシャルティコーヒー協会)の基準やJIS規格に基づき、挽き目を「ミクロン(μm)」と「クリック数」で再定義しました。さらに、どこの家庭にもある「食卓塩」や「グラニュー糖」を使って、あなたのミルの基準点(ゼロポイント)をバシッと決める方法を解説します。

Comandante、Timemore、みるっこ……。主要機材の適正値も網羅した、家庭用グラインド・完全ガイドです。

【当研究所の検証・編集ポリシー】

本記事の推奨値および結論は、以下のデータソースと検証に基づき作成されています。

  • データソース:メーカー公式スペック、JIS規格(砂糖・塩の粒度分布)、Barista Hustle抽出理論、Reddit/SNSでのユーザー検証(各機種 n=50以上を集計・正規化)。
  • 基準機(リファレンス):Comandante C40 MK4(Red Clixなし標準軸)を基準としています。
  • 更新日:2025年11月時点の市場データおよび規格に基づきます。

※本記事には一部アフィリエイトリンクが含まれますが、検証結果や評価への影響は一切ありません。

挽き目を決める前に、まずは『どの比率で抽出するか』を決めておくとブレが少なくなります。比率の考え方は、当ラボの抽出比率ガイドにまとめています。

目次

なぜ「挽き目」が味の9割を決めるのか?(抽出の物理学)

なぜ、挽き目をほんの少し変えるだけで、コーヒーの味は劇的に変わってしまうのでしょうか?

感覚的に「細かけらば濃くなる」と理解している方は多いですが、エンジニア視点で物理現象を紐解くと、そこには「二重の加速効果(Double Multiplier Effect)」という恐ろしいメカニズムが働いています。

表面積と流速の「掛け算」が起きている

コーヒー豆を砕いて粒子を小さくすることは、抽出において以下の2つの変数を同時に、しかも強力に操作することを意味します。

  1. 表面積の増大(成分が出やすくなる):
    粒子が細かくなると、お湯と接する総表面積が幾何級数的に増えます。つまり、成分が溶け出すスピードが加速します。
  2. 流動抵抗の増大(接触時間が伸びる):
    粒子が細かいと、粉同士の隙間が埋まり、お湯が通りにくくなります。結果、ドリップの落ちきる時間(接触時間)が物理的に長くなります。

つまり、「挽き目を細かくする」という行為は、「成分が出やすい状態」にした上で、さらに「お湯に浸かる時間を延長する」という、抽出効率を爆上げするボタンを2つ同時に押しているのと同じなのです。

【図解】挽き目と味のトレードオフ
※常に揺れ動くバランスのイメージです
過抽出
(苦味・渋み)
極細挽き
表面積:大 × 時間:長
未抽出
(酸味・水っぽい)
粗挽き
表面積:小 × 時間:短
Sweet Spot

編集部・研究所の見解

多くの初心者がドリップで失敗する最大の要因は、この「二重効果」を過小評価している点にあります。「ちょっと薄いから」と安易に挽き目を細かくしすぎると、成分が出すぎるだけでなく、お湯が落ちなくなり、結果として強烈な渋みを引き出してしまいます。「挽き目は、湯温や時間よりも遥かに感度が高いダイヤルである」と認識することから、最適化は始まります。

挽き目を数値で揃えた上で、抽出全体の設計まで踏み込みたい場合は、抽出理論2.0(先進テクニック実践編)を次のステップにどうぞ。

【決定版】日本家庭のための「粒度目安表」(砂糖・塩比較)

「Kosher Salt(コーシャーソルト)くらいの大きさで……」

海外のコーヒーレシピ動画を見ていると、必ずこの表現が出てきます。しかし、日本のスーパーにコーシャーソルトなんて売っていません。日本の食卓塩とは粒の形も大きさも違います。

重要なのは、「あなたが今すぐキッチンで確認できる物質」と比較することです。

当研究所では、三井製糖や公益財団法人塩事業センターの規格データ(JIS等)を調査し、日本の家庭環境に最適化した「リアル粒度定規」を作成しました。

JAPAN STANDARD GRIND CHART
レンジ
推奨器具
比較対象 (日本規格)
極細挽き Extra Fine < 200μm
エスプレッソ
トルコ式
上白糖

しっとり微細な粒子。
指で潰すと消える。

細挽き Fine 300-500μm
マキネッタ
ドリップ(浅煎)
食卓塩

赤いキャップの塩。
グラニュー糖より細かい。

中細挽き Medium-Fine 500-800μm
ペーパードリップ
エアロプレス
グラニュー糖

スプーン印等の一般的砂糖。
粒が独立してザラザラ。

粗挽き Coarse > 1000μm
フレンチプレス
コールドブリュー
ザラメ・岩塩

明らかに「粒」。
1.5mm〜2mm程度。

多くの人が誤解していますが、「ドリップ=グラニュー糖」よりも、実は「ほんの少し細かい」くらいが現代的な抽出のスイートスポットです。

まずは、お手持ちのミルで挽いた粉を、白い紙の上で「グラニュー糖」と並べてみてください。もしグラニュー糖より明らかに大きければ、それは「未抽出(酸味)」の原因になっています。

機材別・推奨セッティングチャート(2025年最新版)

ここからは、日本の「家淹れ」ユーザーの所有率が高い主要グラインダーごとの推奨値を解説します。

「ネットで見た設定だと全然合わない」という経験はありませんか? その原因の多くは、モデルチェンジ(C2→C3など)や、使用しているレシピの思想(浅煎り志向か、深煎り志向か)の違いにあります。

当研究所では、最新モデルの仕様に基づき、「ここからスタートすれば大失敗しない」というベースライン(基準値)を設定しました。

クリック数(◯◯ clk)と「#」目盛りの見方

このあと登場する「◯◯ clk」は、手挽きミルのダイヤルをゼロ点から何回「カチッ」と回したかを意味します。一般的には、刃同士が触れ合う直前の位置を「0」とし、そこから数えたクリック数です(例:0から23回回すと「23 clk」)。

「# 3.5」「# 4」などの表記は、電動ミルのダイヤルに印字されている番号(ナンバー)を指します。機種ごとに基準位置や目盛りの設計が異なるため、ここでの数値はあくまで取扱説明書と合わせて使うためのスタート目安としてお考えください。

Comandante C40 MK4
Comandante C40 MK4
V60 (標準) 23 – 25 clk
V60 (Hoffmann) 20 – 22 clk
4:6メソッド 28 – 32 clk
フレンチプレス 30 clk〜
Timemore C3 / C3S
Timemore C3S
ドリップ (標準) 13 – 16 clk
浅煎り (酸味) 13 – 14 clk
深煎り (苦味) 15 – 16 clk
フレンチプレス 20 clk〜
富士ローヤル みるっこ
富士ローヤル みるっこ R-220
ドリップ (中深) # 4 – 5
ドリップ (浅煎) # 3.5 – 4
フレンチプレス # 6〜
エスプレッソ 不可
Kalita Next G2
Kalita Next G2
ドリップ (標準) # 3 – 4
ドリップ (中心) # 3.5
フレンチプレス # 5 – 6
Kalita Nice Cut G
Kalita Nice Cut G
ドリップ (標準) # 2.5 – 4
ドリップ (中心) # 3.5
フレンチプレス # 5〜

▲ 国内外の主要5機種の推奨設定チャート

世界標準:Comandante C40 (MK3/MK4)

1クリックあたり約30μmという高精度な調整幅を持つ、世界中のバリスタの共通言語です。

  • 23-25クリック:最も安全なスタートライン。甘さと酸味のバランスが良い。
  • 20-22クリック:James Hoffmann氏が推奨するような「高効率抽出」向け。沸騰直後のお湯を使い、短時間で成分を出し切る現代的なレシピに適しています。

日本の覇者:Timemore C3 / C3S

Amazon等で圧倒的なシェアを持つTimemoreですが、「C2」と「C3」では刃の形状が全く異なります。

C3に搭載された「S2C (Spike to Cut)」刃は、一度豆を「突き刺して」から切るため、粒度が劇的に揃います。そのため、C2の感覚(20クリック前後)でドリップすると粗すぎてスカスカな味になります。C3ユーザーは「13〜15クリック」という、かなり小さい数字を恐れずに使ってください。

日本ブランドの誇り:Kalita & Fuji Royal

日本国内の喫茶店文化を支えてきたのが、富士ローヤルの「みるっこ」と、カリタの「Next G / Nice Cut G」です。

みるっこ(ゴースト刃)は、粒子が丸く、ドリップした時にふっくらと膨らみやすいのが特徴で、酸味をマイルドにして甘さを引き出します。一方、KalitaのNext G(フラット刃)は、よりクリアでスッキリとした現代的な味作りに向いています。

トラブルシューティング:味で「挽き目」を修正する羅針盤

推奨設定に合わせたのに、まだ美味しくない。そんな時は、あなたの「舌」こそが最強の計測機器になります。

挽き目の調整は、闇雲に行うものではありません。以下の「修正コンパス」に従って、論理的に1クリックずつ動かしてください。

酸っぱい / 薄い / 水っぽい
▼ 細かくする (Finer)
クリック数を減らす
あなたの
現在地
▲ 粗くする (Coarser)
クリック数を増やす
苦い / 渋い / 喉が渇く

例外:「味が薄いのに渋い」というパラドックス

これが最も厄介なケースです。「薄いから未抽出(粗すぎる)かな?」と思って細かくすると、余計に渋くなる。

これは、微粉がフィルターを目詰まりさせてお湯が流れなくなる「チャネリング(偏流)」が原因です。一部から過剰に成分が出て(渋み)、全体としてはお湯が通っていない(薄い)状態です。

この場合、勇気を持って「粗く(Coarser)」してください。お湯の流れをスムーズにすることで、逆にしっかりとした成分が出るようになります。

結論:挽き目の正解は「数値」ではなく、あなたの「舌」にある

ここまでミクロン単位の話をしてきましたが、最後に重要なことをお伝えします。

本日紹介した数値(Comandante 23クリックなど)は、あくまで「迷子にならないためのスタート地点(ベースライン)」です。豆の鮮度、焙煎度、そしてその日の湿度によって、ベストな挽き目は毎日微妙に変化します。

【今日からのアクションプラン】

  1. キャリブレーション:まずはスーパーで「グラニュー糖」か「食卓塩」を買い、自分のミルの挽き目と見比べてください。
  2. 基準値セット:記事内のチャート通りにクリック数を合わせ、まずは1杯淹れてみます。
  3. 微調整(実験):もし酸っぱければ「1クリック細かく」、苦ければ「1クリック粗く」。この実験こそが、家淹れコーヒーの最大の楽しみです。

【重要】挽き目と同じくらい大切な「時間」の管理

挽き目を調整する目的は、最終的に「お湯が通り抜ける時間(流速)」をコントロールするためです。つまり、時間を計らずに挽き目だけを調整しても、片手落ちになってしまいます。

もし、まだドリップスケール(タイマー付きの秤)を使っていない場合は、高級なミルを買う前に、まずは3,000円程度のスケールを導入することを強くおすすめします。

☕ 抽出の沼をもっと深く探求する

Reference & Data Sources

本記事の検証および推奨値は、以下の公的規格、公式情報、専門文献に基づいています。

  • 1. Specialty Coffee Association. “Cupping Protocols & Standards”. sca.coffee
  • 2. Barista Hustle. “Surface Area and Time: The Double Multiplier Effect”. baristahustle.com
  • 3. 公益財団法人塩事業センター. “食卓塩 商品情報・品質規格”. shiojigyo.com
  • 4. 三井製糖株式会社. “商品ラインナップ:スプーン印 上白糖/グラニュー糖”. mitsui-sugar.co.jp
  • 5. Comandante Grinder. “FAQ: Grind Settings Red Clix vs Standard”.
  • 6. James Hoffmann. “The Ultimate V60 Technique”. YouTube/Patreon.

Happy Brewing.
家淹れ珈琲研究所 / Chief Editor

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