- 検証対象 Mokable(ローステッド/フルーティ)、他社コーヒーチョコ2種
- 検証期間 2025年10月〜現在(継続使用中)
- 検証方法 官能評価(SCA Coffee Taster’s Flavor Wheel 準拠の観点整理)、ペアリングテスト、成分表示分析
- 利益相反 本記事はメーカーからの提供を受けていません。全て当ラボによる実費購入・独自検証です。
先に結論だけ(当ラボの見解)
- Mokableは「コーヒー味のチョコ」ではなく、コーヒー豆を主役にした固形プロダクトです。
- 迷うなら、まずはフルーティ(エチオピア)が体験価値として強いです。
- 購入は原則「公式オンライン」が最短。試食や限定品狙いなら「催事(ポップアップ)」が向きます。
※流通・価格・出店は変動します。最新情報は公式発表をご確認ください。
毎朝、丁寧にハンドドリップした後のドリッパーに残る「コーヒーかす」。
実は、私たちが抽出した液体には、コーヒー豆が持つ成分のわずか20%程度しか溶け出していないことをご存知でしょうか。
残りの80%。そこには、ペーパーフィルターに吸着されてしまう良質なオイル分や、お湯には溶けにくい食物繊維、そして豆本来が持つ複雑な香気成分の多くが含まれたまま、ゴミ箱行きになっています。
もし、この「失われた80%」を含めた、豆のポテンシャルを100%味わう方法があるとしたら?
-1024x559.jpg)
※「抽出で何が起きているか(成分・濃度・味のコントロール)」の全体像は、 【完全ガイド】コーヒー抽出の科学|「酸っぱい・苦い」をなくす味づくりの基礎理論 に整理してあります。

今回検証するのは、SNSで話題の「食べるコーヒー」こと、Mokable(モカブル)です。
「1枚1,200円以上する板チョコ? 高すぎないか?」
「コーヒー味のお菓子なら、コンビニで買えるもので十分では?」
正直なところ、当ラボも最初はそう思っていました。自宅にはタイムモアのミルがあり、こだわりの豆をV60で淹れる毎日。いまさら「コーヒー味のチョコ」に心躍るとは思えなかったのです。
しかし、実際に伊勢丹の催事で手にとり、口にした瞬間、その認識は覆されました。
これは単なるお菓子ではありません。抽出というプロセスを経ずに豆の個性をダイレクトに脳へ届ける、「固形化された抽出器具」と呼ぶべき存在でした。
本記事では、当ラボが実際にMokableを購入し、その味、香り、そして成分的な違いを徹底的に検証しました。
話題の「フルーティ」と「ローステッド」の違いから、どこで購入するのが最適解なのかまで。忖度なしのレポートをお届けします。
Mokable(モカブル)とは何か?「コーヒー味のチョコ」ではない科学的理由
まず、誤解を解いておく必要があります。
Mokableは、いわゆる「コーヒー風味のチョコレート」ではありません。構造レベルで全く異なる食品です。
構造比較:カカオマスの代わりにコーヒー豆を使う
一般的なコーヒーチョコレートは、カカオマス(チョコレートの原料)に、香り付けとしてコーヒーの粉末やエキスを添加して作られます。
これには大きな問題があります。カカオ自体が持つ強力な苦味や風味が、繊細なコーヒーの香りを覆い隠してしまうのです。
対してMokableのアプローチは革新的です。
チョコレート製造の根幹技術である「コンチング(精錬)」を応用し、カカオマスの代わりにコーヒー豆そのものを使用しています。つなぎとしてカカオバター(油脂)を使用していますが、カカオの固形分は入っていません。
![一般のコーヒーチョコ: [砂糖] > [カカオマス(苦味)] > [カカオバター] > [コーヒー粉(風味付)]
Mokable: [カカオバター(口溶け)] > [コーヒー豆(苦味・酸味・香りの主役)] > [砂糖]
注釈: 「カカオの苦味に邪魔されず、コーヒー本来の酸味やテロワールがダイレクトに届く」](https://www.zatsulabo.com/wp-content/uploads/2026/01/成分積層イメージ図(スタック)-1024x559.jpg)
この構造により、口に入れた瞬間に広がるのはカカオの味ではなく、コーヒー豆本来の酸味、苦味、そして複雑なアロマです。
また、豆をミクロン単位まで微粉砕しているため、「豆を食べる」といってもジャリジャリした食感はなく、生チョコのように滑らかに溶けていきます。
サントリーと01Boosterが生んだ「日本発」のイノベーション
この製品の信頼性を担保しているのが、その出自です。
Mokableは、飲料メーカー大手であるサントリーホールディングスの社内ベンチャー制度「FRONTIER DOJO」から誕生し、現在は株式会社ゼロワンブースターの支援を受けて事業化されています。
単なる流行りのスイーツではありません。大手企業のR&D(研究開発)と品質管理の知見をベースに、「豆の個性を余すことなく楽しんでほしい」というビジョンを実現するために開発されました。
その実力は海外でも評価されており、トロントのミシュラン推奨レストラン(Lucie, Miku)などでも採用されています。これは、スナックとしてではなく「ガストロノミー(美食)」として認められた証と言えるでしょう。
※「スペシャルティって結局なに?」が曖昧なままだと、産地や品質の話がブレやすいです。基準の整理は スペシャルティコーヒーの基準とは?SCAJの定義・80点スコア・From Seed to Cupまで徹底解説 が入口になります。

【日本最速レベル】どこで買える? 伊勢丹催事と通販の攻略(2025-2026)
「食べてみたいが、コンビニやスーパーで見かけない」
2026年1月現在、Mokableは一般的な小売流通に乗っておらず、購入ルートは限られています。当ラボが調査した“基本の買い方”をまとめました。
→ Yesなら「公式オンラインストア」一択
在庫が安定しており、最短ルートです。
→ Yesなら「百貨店催事(ポップアップ)」
伊勢丹新宿店「フードステージ」(2025年10月実績あり)など、不定期で開催。
→ Yesなら「アソーテッドキャレボックス」
パウチではなく、高級感のある箱入り(12枚入 ¥2,090)を選びましょう。
公式オンラインストアでの購入ガイド
現状、最も確実なのは公式サイト(Shopify/Base等のプラットフォーム)からの購入です。
自分用なら「パウチタイプ」、プレゼントなら「アソーテッドボックス」と使い分けるのが基本。特に夏場や気温の高い時期はクール便対応となるため、まとめて購入して送料を節約するのが賢い買い方です。
ポップアップ・催事情報(伊勢丹新宿店ほか)
Mokableは「体験」を重視しているため、百貨店の催事場でのポップアップストアを積極的に展開しています。
過去には伊勢丹新宿店で、有名パティシエ(YAYOI TOKYOの大塚シェフなど)とのコラボスイーツが販売されました。これらは通販では買えないレアな体験です。
最新の出店情報は公式SNSで告知されるため、購入を急がない方はフォローして次回の開催を待つのも手です。
【当ラボ実食】口コミ検証! ローステッド vs フルーティ徹底比較
「コーヒーを食べる」という体験は、これまでの「飲む」体験とどう違うのか。
そして、現在展開されている2つの主要フレーバー、「ローステッド(深煎り)」と「フルーティ(浅煎り)」にはどのような差があるのか。
当ラボでは、SCAの評価観点を参考に官能評価を行いました。
まずは、両者の特徴を可視化した以下のチャートをご覧ください。

コスタリカ ヴォルカンシートSHG(ローステッド/深煎り)
伝統的なコーヒーの「苦味」や「コク」を愛する方に捧げる一枚です。
アロマ: 封を切った瞬間に広がる、焙煎直後の豆のような香ばしさ。ダークチョコレートのニュアンス。
フレーバー: 口に入れると、上質なビターチョコレートのような重厚感があります。しかし、チョコ特有の「カカオ酸」がなく、後味にはコーヒーオイル由来のまろやかさが長く残ります。
テクスチャ: コンチング技術により、豆の粒子感は皆無。生チョコのように溶けます。
ペアリング ウイスキー、コニャック、ホットミルク
エチオピア イルガチャフィ G1(フルーティ/浅煎り)
こちらが、当ラボが最も衝撃を受けた一枚です。サードウェーブコーヒー好きなら、間違いなくこちらを選ぶべきでしょう。
アロマ: ベリー、ジャスミン、紅茶。コーヒーというよりフルーツティーに近い華やかさ。
フレーバー: 「これがコーヒー?」と驚くような鮮烈な酸味。しかし、液体のドリップコーヒーで感じる鋭い酸味とは異なり、カカオバターの油脂分が酸の角を丸くコーティングしているため、非常に食べやすいです。
独自性: 飲むコーヒーでは揮発してしまう微細な酵素系の風味が、固形油脂の中に閉じ込められており、口溶けと共に爆発的に香ります。
ペアリング クラフトジン、白ワイン、バニラアイス
※フルーティ系の「香りの出どころ(発酵・精製・処理)」を理解すると、体験がさらに面白くなります。入口は なぜコーヒーの味は変わる?精製方法の全知識|「発酵」の科学 がおすすめです。

「まずい」「苦い」という口コミの真相を分析
SNSや口コミサイトでは、一部で「苦すぎる」「値段が高い割に合わない」といった声も見られます。
この評価の背景には、Mokableの特殊な性質への誤解があると考えられます。
Mokableは、いわば「エスプレッソをそのまま齧る」ような濃度で作られています。
一般的なミルクチョコレートの感覚で一枚を丸ごと口に放り込むと、カフェインと苦味のパンチに圧倒されてしまいます。
当ラボ推奨の食べ方:
1枚(キャレ)をさらに4等分に割り、ひとかけら舌の上に乗せ、体温でゆっくり溶かしながら香りの変化を楽しむのが正解です。
この食べ方であれば、「苦味」ではなく「芳醇さ」として知覚できるはずです。
「食べるコーヒー」の科学と世界トレンド
なぜ今、世界中で「Solid Coffee(固形コーヒー)」や「Edible Coffee(食べるコーヒー)」が注目されているのでしょうか。
その背景には、日米で異なる文化的アプローチがあります。
「忙しくてコーヒーを飲む暇もない」「トイレ休憩を減らしたい」というニーズに応えるエナジーバーとして進化。
カフェイン含有量を明記し、効率的な覚醒を目的とする傾向が強い。
素材の味を極限まで引き出す「ガストロノミー」として独自の進化。
産地ごとの個性を楽しむためのツールであり、ミシュラン星付き店など美食の文脈で評価されている。

抽出では捨てられてしまう「80%」の正体
冒頭で述べた通り、ドリップコーヒーの抽出カスには豆の約80%が残ります。
ここには、水に溶けにくい不溶性食物繊維や、ペーパーフィルターに吸着されてしまうコーヒーオイル(カフェストール等)、そして強力な抗酸化作用を持つクロロゲン酸類の一部が含まれています。
Mokableはこれらを丸ごと摂取できるため、栄養学的な観点からも理にかなった摂取方法と言えます。
特にコーヒーオイルには、揮発性の高い香り成分が多く溶け込んでいるため、「食べる」ことで初めて体験できるアロマの世界があるのです。
※「香りが立つ/消える」の理屈を知ると、Mokableの体験が一段上がります。 【コーヒーアロマの科学】なぜ豆によって香りが違うのか?香りの全貌 も合わせてどうぞ。

豆を丸ごと摂取するため、同じ重量のコーヒー液と比較してカフェイン摂取効率が高くなります。
美味しいからといって、一袋を一気に食べることは推奨しません。
1日1〜2枚(キャレ)を目安に、嗜好品としてお楽しみください。
※妊娠中の方、カフェインに敏感な方は特にご注意ください。
家淹れ派に捧ぐ、Mokableの「実験的」楽しみ方(レシピ)
そのまま食べるだけではもったいない。
家淹れ珈琲研究所としては、このユニークな素材を使ったペアリングやアレンジを提案します。
ココアとは違い、コーヒーオイルが表面に浮くリッチな味わいに。
冷たいアイスと、口の中で溶けるMokableの温度差が香りを爆発させます。
液体だけでは足りない「ボディ感」や「フレーバー」を補完できます。

結論:Mokableはコーヒーの「第4の波」となり得るか?
ここまで、Mokableの構造、味、そして科学的背景を検証してきました。
正直なところ、1枚(36g)で1,280円という価格は、日常的なスナックとして見れば高額です。しかし、これを「新しいコーヒー体験へのワークショップ参加費」と捉えるなら、その価値は十分にあります。
抽出器具や豆にお金をかける私たち家淹れ派にとって、Mokableは「飲む」だけでは到達できなかった豆の核心(残り80%の世界)に触れるための、最短のチケットです。
迷っているなら「フルーティ(エチオピア)」を買うべきです。
ローステッドも高品質ですが、従来の「コーヒーチョコ」の延長線上で理解できる味です。
対してフルーティは、コーヒーが「フルーツの種」であることを脳に直接訴えかけてくる、未体験の衝撃があります。
酸味が苦手な人こそ、油脂でコーティングされたこの優しい酸味を体験してほしいと思います。
※まずは2種セットで自分の舌で産地の違い(テロワール)を確認することをおすすめします。
この記事を読んだ方におすすめの「次の一杯」
Mokableを通じて、コーヒー豆の「産地」や「成分」に興味が湧いた方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。 知識が深まることで、食べるコーヒーも飲むコーヒーも、より一層美味しくなるはずです。
「抽出は20%」の意味を、濃度・成分・味の作り方まで体系的に整理できます。
「エチオピア/コスタリカ」など産地の“違いの見分け方”を、買い方から整理できます。
フルーティ系の“香りの出どころ”を、精製・発酵の視点で理解できます。
「食べる」ことで香りが爆発的に立つ理由を、香気成分の観点で深掘りできます。
「第4の波」的な新潮流を、メリット・懸念点・見分け方まで整理してから楽しめます。
「品質・産地・テロワール」を語るための“共通言語”を先に揃えられます。
- MOKABLE公式サイト(https://mokable.jp、2026年1月閲覧)
- MOKABLEオンラインストア(https://store.mokable.jp/、2026年1月閲覧)
- (プレスリリース)「コーヒーを“食べる”『MOKABLE(モカブル)』始動。」(2025)
- U.S. Food and Drug Administration (FDA) – Caffeine Content of Food & Beverages
- Specialty Coffee Association (SCA) – Coffee Taster’s Flavor Wheel
- Heo et al., “Antioxidant Activity and Caffeine Content in Coffee Beans”, Journal of Food Science (2020)

レビュー.jpg)
コメント