スーパーのコーヒーコーナーに立ち寄ったとき、あなたはどちらのフィルターをカゴに入れていますか?
「なんとなく漂白剤が怖そうだから、自然な茶色(無漂白)を選んでいる」「環境に優しそうだし、茶色い方がコーヒーの雰囲気に合っている」
もし、あなたがそう考えて茶色のフィルターを選んでいるとしたら、少しもったいないかもしれません。実はその選択が、家で淹れるコーヒーの味を「濁らせる」原因になっている可能性があるからです。
この記事は、コーヒーフィルターの「色」に関する常識をアップデートし、あなたの一杯をよりクリアにするためのガイドです。当ラボが複数のフィルターを同条件で検証・飲み比べした結果に基づき、「再現性のある考え方」をまとめます。
結論:迷ったら「白(漂白)」を基準にしてください。
理由はシンプルで、紙の“匂い・味”がコーヒーに乗りにくい方向に寄せやすいからです。
✅ 迷ったらこの2つ(購入リンク)
CAFEC アバカフィルター(白)
「まず失敗したくない」「浅煎りも深煎りも広く対応したい」人の基準にしやすいフィルターです。 湯抜けの“通り道”が作りやすく、紙の存在感が後ろに下がりやすい方向。
HARIO V60 02
「迷ったら基準を買う」。同じ紙を継続購入すると、味のブレが減って調整がラクになります。 当ラボ的には、抽出比(黄金比)を固定してからペーパー差を見ると、判断が一気に速くなります。
結論 迷ったら「漂白(ホワイト)」を買うべき3つの理由
結論からいきます。これから美味しいコーヒーを淹れたいのであれば、まずは「漂白(ホワイト)」を基準にしてください。
「漂白」という言葉には、どうしてもネガティブな印象がつきまといます。ただ、現在は酸素系の漂白などが主流で、食品用途として流通する製品は基準に適合しているのが一般的です(※不安な方はメーカーの説明・認証情報も確認してください)。
1. 味への影響が少ない(紙臭さの真実)
コーヒーの味を邪魔する最大のノイズのひとつが「紙の味」です。
漂白フィルターと無漂白フィルターにお湯だけを通してテイスティングすると、差が出ることがあります。
- 漂白フィルター(白):比較的ニュートラルで、湯の風味変化が小さい傾向。
- 無漂白フィルター(茶):湿った段ボールのような香り(Paper Taint)を感じる場合がある。
無漂白特有の香りは、浅煎りのフルーティーな酸味や香りをマスクすることがあります。
もし「浅煎りが酸っぱくて苦手」に寄っているなら、まずは抽出変数(温度・時間)も含めて整理するのが近道です → 酸味が強い原因と対策(抽出の科学)

2. 現代の漂白は、必要以上に怖がらなくていい
主要メーカーが採用する漂白は、酸素系のプロセス(過酸化水素など)を含むことが多いです。一般に、適切に製造された食品用途のフィルターであれば、通常の使用で過度に心配する必要は小さいと考えられます。
ただし当ラボは「安全」を断定する立場ではないので、気になる方はメーカーの説明(材料・工程・認証)を一次情報として確認してください。
3. 抽出が安定しやすい(均一な繊維)
フィルターの色は、紙の不純物や繊維処理の差にもつながることがあります。繊維の状態がより均一だと、湯の通り道(ポア)が安定しやすく、抽出の再現性が上がります。
「味が毎回ブレる」悩みは、ペーパー以外にも原因が多いです。まず全体像はここで一度おさえるのがおすすめです → 【完全ガイド】コーヒー抽出の科学

紙由来の香りが出る場合があり、
風味をマスクすることがある。
比較的ニュートラルで、
豆本来の香りを邪魔しにくい。
色より大事なのは「構造」と「密度」
ここまで「色(漂白/無漂白)」の話をしてきましたが、味を決定づける重要な要素がもうひとつあります。それは「紙の構造」です。
メーカーごとに「お湯をどう流すか」の設計思想が異なり、この違いを知るだけで抽出のコントロール力が上がります。
「クレープ(シワ)」が湯の流れをコントロールする
フィルターの表面には細かなシワ(凹凸)があり、一般に「クレープ」と呼ばれます。
このクレープには、主に2つの役割があります。
- スムーズな通液性の確保
ドリッパーとペーパーの間に空気の層を作り、湯が落ちる道を確保します。 - 微粉のキャッチ
立体的なシワの中に微粉を取り込み、目詰まりを緩和します。
ここ、ドリッパー側の設計(穴数・リブ形状)でも挙動が変わります。ペーパーを語る前提として、ドリッパー側の“流れの作り方”も一度だけ確認しておくと強いです → ドリッパーの穴の数と味の違い

クレープ構造と抽出の関係(断面イメージ)
抽出
シワが「空気の通り道」を作ることで、湯が詰まりにくくなります。
フィルターの「厚み」と「密度」の関係
「厚い紙=湯落ちが遅い」と思われがちですが、重要なのは紙の「密度」です。
繊維が詰まった高密度の紙は薄くても抵抗が大きい場合があります。逆に、厚手でも繊維がふわっとしていれば湯がスムーズに抜けます。
そして密度や目詰まり感は、豆よりも先に「挽き目(微粉量)」の影響を強く受けます。
ペーパー比較の精度を上げたいなら、粒度の基準を先に作っておくのが勝ちです → 挽き目の標準ミクロンチャート

【日本で買える】主要4大ブランドの性能比較
ここからは、日本で入手しやすい主要ペーパーフィルターの“性格”を整理します(※抽出条件や粉の粒度で結果は変わります)。
クリアさを狙いやすい。
現代の定番枠。
ゆっくり抽出になりやすい。
安定感のある定番。
世界標準にして王道「HARIO V60」
まず外せないのがHARIOです。購入時は、同じ型番でもパッケージ/ロットで紙の印象が変わることがある点に注意してください。可能なら「いつも同じもの」を継続購入するのが、再現性の近道です。
購入するなら、上の HARIO V60 02 を基準にすると整理が一気にラクになります。
抽出効率を狙う「CAFEC アバカ」
近年、定番として強いのがCAFECの「アバカ」。クレープ設計と繊維配合の思想がはっきりしていて、湯抜けがスムーズになりやすい傾向です。
上位版の「Abaca+」などもありますが、まずは通常の Abaca から試すのが一番わかりやすいです。
競技会級の選択肢「Sibarist」
「特別な豆を最高にクリアに淹れたい」ならSibaristが候補になります。価格は上がりますが、狙いがハマると“紙の存在感”がかなり後ろに下がります。
まったり派のための「Kinto」と「Origami」
酸味よりも、喫茶店のようなまろやかさを楽しみたい場合は、厚み・密度が違うフィルターで寄せられることがあります。OrigamiフィルターはOEMなど流通背景もあるため、購入先の説明も確認すると安心です。
「リンス(湯通し)する・しない」論争の最終回答
「フィルターをセットした後、粉を入れる前にお湯をかけるべきか?」当ラボの結論は次のとおりです。
無漂白フィルターの場合:【必須】
無漂白を使うなら、たっぷりの熱湯でリンスし、落ちた湯は捨ててください。紙由来の香りが出やすい場合、ここで差が出ます。
漂白フィルターの場合:【推奨】(ただし必須ではない)
漂白は紙の味が比較的出にくいので、味への影響という点では必須ではありません。ただし次のメリットがあります。
- 器具の予熱:抽出中の湯温低下を防ぐ
- 密着性の向上:横漏れを減らして抽出が安定しやすい
なお「予熱」は、温度が絡むので効果が出やすいです。温度を詰めると“紙の差”も見えやすくなります → コーヒーの味は温度で決まる(最適温度の科学)

Sibaristのような薄いフィルターは、リンスで張り付きすぎて空気層を潰す場合があります。ここは「少量で済ませる/あえてしない」も選択肢です。
目的別・推奨ペアリングリスト(まとめ)
最後に、目的別の“迷わない”リストです。
✅ 深煎り寄せ(購入リンク)
まとめ
たかが紙、されど紙。
数百円の投資で、毎朝のコーヒーがクリアに寄るなら、かなりコスパの良いアップグレードです。
「無漂白=自然で正義」という思い込みをいったん脇に置き、まずは科学的に扱いやすい「白」を基準にしてみてください。
最後に、ペーパー比較の精度をさらに上げたい人は「蒸らし」もセットで整えるのが効きます → 蒸らし時間の科学(湯量3倍・1分の考え方)

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- Coffee ad Astra(Jonathan Gagné)
- Coffee ad Astra – Physics(フィルター/微粉関連)
- Barista Hustle – Rinsing Paper
最終確認日: 2025年12月22日


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