初心者レッスン #12|明日から“中級”へ進むためのロードマップ。家淹れ珈琲研究所の歩き方ガイド

こんにちは、家淹れ珈琲研究所です。

初心者レッスン #1から#11まで、長い道のりをお疲れ様でした。そして、完走おめでとうございます。

これまでのレッスンで、あなたは計量スプーンでの目分量から卒業し、スケールを使って「1比16」で淹れる習慣を身につけました。酸っぱいコーヒーになれば挽き目を調整し、保存容器にも気を配れるようになっています。

断言します。あなたのコーヒーを淹れる「フォーム(型)」は、すでに完成しています。

これまでは、失敗しないための基礎体力作りでした。しかし、ここからは違います。ここから先は、あなたが何に感動し、何を追い求めたいかによって進む道が変わる「中級」の世界です。

コーヒーの楽しみ方は、登山のルート選びに似ています。頂上の景色(最高の一杯)は同じでも、岩場を登るスリル(抽出技術)を楽しむのか、植生や地質(豆や精製)を観察しながら登るのか、最新のギア(道具)を試しながら登るのか。ルートは一つではありません。

今回のレッスン #12は、いわば「中級への登山口にある案内板」です。これまでの道のりを整理し、明日からどのルートへ足を踏み出すか、一緒に地図を広げてみましょう。

まずは、「ここまで来た自分」をざっくり振り返る

新しいルートへ進む前に、少しだけリュックの中身を確認しましょう。これまでの11回のレッスンで、あなたが手に入れた「スキルセット」は、あなたが思っている以上に強力な武器になっています。

※ 横にスクロールして歩みを確認できます
Lesson #1-3
📏
数値管理
1比16と温度
Lesson #4-6
👅
味覚調整
挽き目の診断
Lesson #7-9
💧
素材管理
保存と水
Lesson #10-11
☕️
言語化
好みの把握
NOW
🎓
初心者卒業
中級の入り口

Lesson #1〜#3 数値という「定規」を手に入れた

最初は「なんとなく」お湯を注いでいたかもしれません。しかし今のあなたは、スケールを使い、豆とお湯の比率(ブリューレシオ)を管理できています。温度計を使い、90℃と85℃の味の違いを知っています。これは、再現性の土台が出来上がったことを意味します。

Lesson #4〜#6 味のトラブルシューティング能力

「今日のコーヒー、なんか酸っぱいな」。以前なら豆のせいにしていたかもしれませんが、今は「挽き目が粗すぎたかな?」「抽出時間が短かったかな?」と仮説を立てられます。このリカバリー能力こそが、脱・初心者の最大の証です。

Lesson #7〜#11 素材への敬意と、自分の舌の理解

古い豆を避け、水を意識し、ミル(グラインダー)の重要性を理解しました。そして何より、Lesson #11で「自分はどんな味が好きなのか」を言葉にしました。世間の評価ではなく、自分の舌を信じる準備が整ったのです。

さあ、準備運動は十分です。次は、あなたがどのタイプなのか診断してみましょう。

Step1|かんたんチェックで「今のあなたのタイプ」を知る

中級への道は一つではありません。まずは、あなたの「興味のアンテナ」がどこに向いているか、直感でチェックしてみましょう。
一番「あるある!」と思うものが、あなたの適正ルートです。

🧪
「なぜ?」の理屈を知るのが好き
  • レシピを少し変えて味の違いを比べるのが楽しい
  • 「90℃と85℃で何が変わる?」と聞かれるとワクワクする
  • 感覚よりも、数字やグラフで説明される方が納得できる
あなたは
【ルートA】抽出の科学タイプ
🍒
豆の個性にときめく
  • パッケージの「エチオピア」「ウォッシュト」等の文字が気になる
  • フルーティーな香りや、発酵感のあるコーヒーに感動した
  • ワインのように産地ごとの味の違いを知りたい
あなたは
【ルートB】豆・精製・発酵タイプ
⚙️
新しい道具・ギアに目がない
  • 新しいミルやケトルのレビュー記事をつい読んでしまう
  • 「道具を変えると味が変わる」という検証実験が好きだ
  • 長く使える一生モノの道具を選び抜きたい
あなたは
【ルートC】器具・レビュー沼タイプ
🏡
暮らしの中に馴染ませたい
  • 毎日の習慣として、無理なく美味しいコーヒーを続けたい
  • 豆の保存方法や、コスパの良いサブスク選びに関心がある
  • 在宅ワークや家族との時間など、生活リズムを大事にしたい
あなたは
【ルートD】運用・サブスクタイプ

もちろん、「道具も好きだけど豆も気になる」というように、複数のタイプに当てはまる方も多いはずです。それはとても健全なことです。

ただ、最初からすべての沼に飛び込むと、情報の多さに溺れてしまいます。まずは「メインのルート1つ + サブ1つ」くらいに絞って進むのが、迷子にならずに楽しむコツです。

Step2|中級への4つのルートをざっくり紹介

ここからは、上記で判定した4つのルートについて、具体的な「歩き方(ロードマップ)」を紹介します。自分が選んだルートの項目を重点的に読んでみてください。

  • ルートA|抽出の科学:理論と実験で、プロの味を再現する最短ルート。
  • ルートB|豆・精製・発酵:多様化するフレーバーとテロワールを旅するルート。
  • ルートC|器具・レビュー沼:投資対効果を見極め、理想の環境を構築するルート。
  • ルートD|家カフェ運用:「続けること」に特化し、QOL(生活の質)を最大化するルート。

それでは、それぞれの地図を広げていきましょう。

ルートA|「抽出の科学」へ進む人のためのロードマップ

「なぜ、あの店のコーヒーはあんなに甘いのか?」「なぜ、自分のコーヒーは日によって味が変わるのか?」
このルートは、そんな疑問を「感覚」ではなく「理論」で解き明かす探求の旅です。

目指すのは「意図的な再現」

このルートの武器は、スケールや温度計に加え、TDS(濃度)収率(Extraction Yield)といった新しい指標です。少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、これらは「味の地図」のようなもの。地図があれば、迷わずに目的地(理想の味)にたどり着けるようになります。

理想の一杯 Golden Cup
🌡️ 湯温
抽出効率の鍵
📏 粒度分布
微粉の制御
🌀 撹拌
Agitation
⚖️ 比率
Brew Ratio

私たち家淹れ珈琲研究所でも、TDS計を用いて検証を行っていますが、これは数字遊びではありません。「酸味を減らしたいなら、温度を下げるよりも粒度を揃えた方が効果的ではないか?」といった仮説を検証するための、あくまで「味覚の補助線」です。

最近の研究(UC Davis Coffee Centerなど)では、単純な温度管理だけでなく、「粉の粒度分布」や「お湯の注ぎ方(流量)」が味に与える影響の大きさが注目されています。このルートでは、そうした最新の理論も噛み砕いてお伝えします。

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ルートB|豆・精製・発酵・スペシャルティの世界へ進むロードマップ

コーヒーは農作物であり、フルーツです。このルートは、産地(テロワール)や精製方法(プロセス)による「香りの多様性」を楽しむ旅です。

「発酵」が変えたコーヒーの常識

数年前まで、コーヒーの味は「苦味と酸味のバランス」で語られていました。しかし今は違います。2024〜2025年のトレンドである「アナエロビック(嫌気性発酵)」「インフューズド」といった新しい精製技術により、まるでワインやフルーツジュースのような香りのコーヒーが登場しています。

テロワール 土壌・標高・品種などの条件
PROCESSING 精製プロセスで「香りの方向性」が決まる

Washed / ウォッシュト

クリーンで輪郭のある味わい

  • レモン・ライム
  • ジャスミンティー
  • 透明感のある酸

Natural / ナチュラル

甘みと果実感がしっかり

  • ストロベリー
  • ブルーベリージャム
  • ドライフルーツ

Anaerobic / 嫌気性発酵

発酵由来の複雑で個性的な香り

  • 赤ワイン
  • スパイス・シナモン
  • トロピカルフルーツ

先日開催されたSCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)のイベントでも、強烈な発酵臭がする豆よりも、素材の良さを活かした「クリーンで上品な発酵感」を持つ豆が評価される傾向にありました。このルートでは、そんなトレンドの最前線も追いかけていきます。

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ルートC|器具・ギア・レビュー沼へ進むロードマップ

「道具を変えれば、味は変わるのか?」答えはイエスです。しかし、「高い道具を買えば美味しくなるか?」と問われれば、答えは「モノによる」となります。

投資対効果(コスパ)を見極める

このルートは、限られた予算をどこに投下すべきかを見極める「賢いバイヤー」への道です。2025年現在、円安の影響で海外製グラインダー(Commandanteなど)の価格が高騰しています。だからこそ、「どこにお金をかければ味が劇的に変わるか」を知ることが重要です。

↑ 味の変化:大 金額:高 → 金額:低
ミル (最優先)
スケール
ケトル
ドリッパー
マシン

図の通り、最も味を変えるのは「ミル(グラインダー)」です。逆にドリッパーは数千円で味がガラリと変わるため、最もコスパ良く遊べるアイテムです。「高いケトルを買ったのに味が変わらない…」と嘆く前に、この優先順位マップを頭に入れておきましょう。

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ルートD|家カフェ運用・サブスク・日常のコーヒーを整えるロードマップ

コーヒーは趣味であると同時に、毎日の生活の一部です。「素晴らしい一杯」を淹れることよりも、「美味しくないコーヒーを飲む日をゼロにする」ことを目指すのがこのルートです。

「冷凍保存」と「サブスク」で生活を自動化する

忙しい平日、毎回豆を計って挽くのが大変なら、週末にまとめて計量して小分け冷凍しておくのも賢い戦略です。最新の研究でも、適切な冷凍保存は常温よりもアロマを長く保つことが分かっています。

📦 月初:仕入れ

サブスクや店舗で200g×2袋を入手。
すぐに使う分以外は、小分けして冷凍庫へ

☀️ 平日:時短運用

冷凍庫から1回分を取り出し、そのままミルへ投入。
思考停止で美味しいを確保。

☕️ 休日:探求

新しい豆を開封したり、カフェ巡りでインプット。
自分の好みをアップデートする日。

このように、頑張りすぎないシステムを作ることが、長くコーヒーライフを楽しむ秘訣です。

まず読むべき記事セット

Step3|1か月の“中級デビュー・学びプラン”を決めよう

ルートが決まったら、来月1か月間の中級デビュープランを立てましょう。あれこれ手を出す必要はありません。以下のリストを埋めるだけで十分です。

Next Action List
  • 今の自分のタイプ(ルート)を決めた
  • そのルートの記事を1つ読んだ
  • 来月やりたい実験 or 買い物をノートに書いた
  • 明日の朝、設定を1つだけ変えてみる

迷ったらここへ。「ハブ記事」リストとブログの歩き方

中級の海へ漕ぎ出した後、「あれ、やっぱり基礎が分かってなかったかも?」と不安になることがあるかもしれません。そんな時は、いつでもこのページに戻ってきてください。

以下は、各ジャンルの「総本山(ハブ記事)」への直行便です。ブックマーク代わりにお使いください。

まとめ|レッスン #12 の宿題

「中級」は、終わりのない旅の始まり。

これにて、全12回の初心者レッスンは終了です。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

冒頭でもお伝えしましたが、「中級」とは資格ではありません。コーヒーという深く広い沼を、「自分の足で歩き、自分の舌で楽しむ準備ができた状態」のことです。

抽出を極めるもよし、いろんな豆を飲み歩くもよし、最高の器具を揃えるもよし。正解は一つではありません。あなたが選んだルートが、あなたにとっての正解です。

もし道に迷ったら、またこの家淹れ珈琲研究所(ザツラボ)に帰ってきてください。私たちはいつでも、新しい地図とコンパスを用意して待っています。

今回のレッスンで選んだあなたの「ルート」や、これからの意気込みを、ぜひSNSで教えてください。
ハッシュタグ #家淹れ珈琲研究所 での投稿、楽しみにしています!

参考文献・情報ソース

「家淹れ珈琲研究所」のコンテンツは、以下の国際的なコーヒー規格、学術研究機関の論文、および信頼できる業界団体のガイドラインを参照基準として作成・検証しています。

※記事内で紹介した器具の価格、入手難易度、および店舗情報は、執筆時点(2025年)の国内流通状況に基づきます。
※味覚の感じ方には個人差があります。当研究所のレシピは「再現性の高い基準」を示すものであり、絶対的な正解を保証するものではありません。
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